<経歴>
1935年 大阪市で生まれる。本名・ゑみ子。
空襲で岡山県に疎開する。戦後も岡山県に住む。
詩集『塔』、『盗賊の紋』、『エミコ・プロムナード』、『花座標』、『献立日記』、『天鼓鳴る』、『わたしと瀬戸内海』、『黒田えみ詩選集一四〇篇』。詩画集『小さな庭で』。『薄田泣菫詩抄 秘めた恋』、『評伝 松村緑』、『平尾不孤作品集』、『薄田泣菫の世界』。
所属「日本詩人クラブ」「日本現代詩人会」「中四国詩人会」「岡山県詩人協会」。
詩誌「ネビューラ」、詩誌「柵」同人。
<詩作品>
億年の朝
何をしに生まれてきたかと問われたら
愛するためにと答えよう
人間を 友人を 家族を
何をして生きているかと問われたら
詩を書いていると答えよう
喜びを 希望を 感謝を
どこへ行くのかと問われたら
落ち葉のようにと答えよう
さわやかな風へ 流れる水へ 安らぎの土へ
聖女になれず
鬼にもならず
夜明けを待っている
覚めては眠り 形を変え 移りかわる
終わりなく 始めなく 進化はまぼろし
時間なし 空間なし すべてが無だとすれば
ここに在って悟りを求めるこころも
また まぼろし
あれは修羅
あれは地獄
あれは天界
女一人旅
ひとりぼっちが好きだと言い
バスと列車を乗り継いで
―どちらへ?
さあ
ひとり歩きがいいと言い
橋の上で 地図をひろげて
―おひとりですか?
まあ でも
ひとり寝にかぎると言い
知らない街のネオンサインを
窓から眺めている
―あすの晩は?
ええ
たぶん また
ひとりぐらしをつづけると言い
安産守り
縁結び守り
夫婦和合守り
守り鈴はふえつづけて
―どなたへ お土産?
押入れの奥のがらくたを
戸棚の隅のがらくたを
からだにまといつくがらくたを
―捨てましたか?
いいえ
心のがらくたといっしょに
まだ
部屋の中に
―おでかけですか?
ええ